工期が予定より遅れに遅れ、「遅いぞ、遅いぞ」とイライラしてみたかったような気もします。
善福寺川の旧称、遅野井川
都立善福寺公園といえば、上の池と下の池に分かれた天然の湧水池、善福寺池を湛えた豊かな自然が楽しめる公園としてひそかに人気です(大々的に、と言えないのは残念ですが)。この善福寺池は西高東低の地勢をもつ東京において、歴史的には所在地より東側に住む住民達に生活用水を提供する善福寺川の起点となり、善福寺川は都市部に似つかわしくないダイナミックな蛇行を続けた後、中野富士見町のあたりでより大きな河川である神田川に合流します。神田川とはすなわち井の頭池を起点とする河川ですので、武蔵野三大湧水池のうち2つの水が神田川という川に集まることになり、さらに石神井公園の三宝寺池を水源の一つとする石神井川ともはるか先の隅田川で合流し、東京湾へと出ます。
この善福寺川、善福寺川と呼ばれるようになったのは池のほとりにあったという善福寺というお寺の名前を拝借してのものですが(現在は廃寺)、水源のことを遅野井と呼んでいた関係上、遅野井川という呼び方でも親しまれてきました。では水源に遅野井という名称が何故ついたのかというと、かつてこの地に遠征にやって来た源頼朝が湧水の出の遅さに腹を立て、「遅いぞ、遅いぞ」とイライラしたために遅野井になったという由来が語られています。あまり格好の良い由来でないからか、現代の世の地図ではこれが善福寺という名称で上書きされてしまっていましたが、この夏に善福寺公園内施設としてオープンする親水施設の名称として”遅野井”が大々的に復活するようです。
地元小学生からの声を受け、善福寺公園内に親水施設が登場
その親水施設の名称は、遅野井川親水施設。上の池と下の池を結ぶ水路としてこれまで存在していた”ホタル水路”は、ホタルの保護という目的があったためか人を寄せ付けない柵で覆われており、公園内でもその存在が非常に地味なものでした。今から遡ること4年前の2014年に近隣の井荻小学校の子供達より「遊べる水路にしてほしい」と区長への要望があり、このホタル水路部分が親水施設として再整備される運びとなりました。
親水施設の工事自体は、3月頃には完了してその全景を見る事が出来るようになっていました。ただオープンまでには芝生部分の養生が必要であったため、親水施設の解禁まで4ヶ月の期間を要したのです。新たな施設のオープンを楽しみにしていた者としてはここで満を持して「遅いぞ、遅いぞ」と言い放ちたいところですが、子供達の夏休みの始まりにピッタリ合わせてということなのでしょうか、7月21日(土)に予定通り利用開始できる運びになるようです。
利用開始日の7月21日(土)には、10:00〜11:00にかけて開園式が行われ、参加者の先着250名には記念に花鉢が配布されるようです。汚い水でも構わず遊んでいた世代としてはこうした立派な親水施設の登場に羨ましさを覚えますが、オープンな環境で子供達に水と親しんでもらえるというのはすなわち親御さん方の安心にも繋がるでしょうから、善福寺公園のひそかな人気もよりアップすることに、今後期待できるのではないでしょうか。
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