11月に入って、樹々の葉の色付き具合は日ましに深まり、また落葉樹が地面に葉を落とし始めるなどして、公園散策で発見できる楽しみが多くなってきましたね。そうなってくるともう、公園自体が芸術作品になるようなものなのですが、井の頭公園や石神井公園のような広く名の通った公園ならいざ知らず、住宅街のへそとでもいうべき立地にある善福寺公園の芸術は、そのままでは公園の近隣に住む僅かな人々によってしか目撃されぬまま公開期間を終えてしまいます。だからこそ、あえてこの季節に野外アートイベントを開催し広報することで、多くの人に公園自体の芸術の存在にも気付いてもらおう、そうした意図があるのかもしれません。今年が16年目となった善福寺公園のトロールの森が、11月3日(金・祝)〜11月23日(木・祝)の期間で開催中です。
野外アートの今年のテーマは
芸術の秋に合わせて行われるトロールの森では、毎年決められたテーマに沿った野外アートが、公募によって集まった国内外のアーティスト達により公園に配置されます。5年ほど前からは期間中のアートの展示場所が西荻窪駅方面にも拡げられ、善福寺公園でイベントを行っている最中であることがより分かり易くなりました。トロールの森を象徴するようなカラフルに塗られた人型の板は、こどもの日に合わせて地域の子供達の協力で行われるトロールの森春展でも度々登場しますが、このカラフルな板が西荻窪の街の至る所に設置されているのを見ると、街に繰出したトロールが公園の道案内を買っているようにも見えます。
今年の展示テーマは「BORDER」であるそうなのですが、公園という場所と芸術との境は既に曖昧になり始めているのかもしれません。
公園でアートを探そう
野外アートの作品を探すうちに、公園自体がもつ様々な部分までもがアートの作品に見えてくる、そういう体験が面白いといったようなストーリーの流れは、以前トロールの森を扱った記事で既に用いていました。今年もそのような感じで、野外アートを楽しみながら紹介していきたいと思います。
まず、上の池の内田秀五郎像前に向かい合って生えていたタケノコ。クマザサの群生の中にあるので、アートというよりは擬態の方向性を目指しているように見えて、アートとは何か考える作品でした。
案内表示といえば、公園内の要所要所スポットについてバス停の形をしたオブジェで案内していましたが、これは常設されても良いくらい便利ですね。杉並浄水所などはこの案内表示によって存在に気付いた人も居そう(表記は杉並浄水場となっていましたが)。
インスタ映えしそうな…というのはアーティストに怒られそうな禁句かもしれませんが、実際携帯カメラのフレームに収まりそうなコンパクトなアートが多かったかなという印象も。
この幻想的な花のアートは、写真を撮っている家族がちょくちょく見受けられました。遠景にして良し、接写して良し。
大人しめなアートが並んでいると、たまにこのネズミのような刺激への糸口が欲しくなりますね。公園向けかは分かりませんが。
これは公園に元々ある鉄棒でしたね。イベントの終了とともに一緒に撤去されてしまうのではないかと心配。
嘘です。でもアート作品と公園に常設されたものとの境界が曖昧になってくるでしょう?
これも、公園設備です。確か今年新しく作られた池の柵であると思うのですが、イベント終了後に撤去されてしまい利用者を困惑させるというアートパフォーマンスに期待したいところ。
アートな目で見ると、下の池にあったなんでもない工事衝立ですら、何かを主張しているアートのように見えます。安全第一というメッセージの過剰性。
トロールの森2017で感じたことなど
毎年このトロールの森を歩くことによって、公園の日常的風景の中に疑問を持つことが出来るので飽きずに楽しむことが出来ています。勿論それは公園を主役に見立てた捻くれた(けれども、不真面目ではありません)楽しみ方なのですが、参加アーティストの方々のスタンスも、公園が主役で自分達は公園の飾り付けを作っているに過ぎない…となってしまうと主張の激突が失われて、つまらないイベントになってしまうような気がします。それでは商店街が年末に街灯を飾り立てるのと等しい価値になってしまう。そこで、美しい公園をより美しく見せるアートという方向性を離れて、思わず振り向かせるようなアートを作り続けて欲しいと感じました。
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