西荻窪 颯爽堂
ブックス・ルーエの紹介記事で、地域内アンテナ書店という概念を唱えました。地域を代表する人通りの多い場所で地域情報を無償提供することにより、域外在住者の欲しがるその地域の足がかりとなる情報、地域在住者が欲しがるその地域の新しい情報、どちらのニーズにも訴求し賑わいを作り出すという戦略の書店のことを、アンテナショップの一形態、地域内アンテナショップに絡めた造語でした。
そうした概念を思いついたのは、吉祥寺の繁華街サンロードでずっと生き残り続けているブックス・ルーエと、もう一店、典型的なアンテナ書店として挙げることのできる書店の例を知っていたからです。それが西荻窪駅にほど近い場所にある颯爽堂さんです。
西荻北銀座の、以前紹介した日本一のカツ丼屋坂本屋の丁度向かい当たりにある颯爽堂は、2009年オープンの比較的新しい店です。内装は非常に洗練されていて、照明の感じや棚の配置など、エキナカによくあるタイプの書店に似ています。
西荻窪駅周辺の新刊書店といえば、今野書店や信愛書店、少し離れたところにブックセラーズ西荻など、駅ビル・デパート書店が無いゆえに古株が頑張っている印象があります。とはいっても、長らく駅前に店を構えていたブックスオオトリが2011年に閉店するなど、小さな街に書店が飽和気味という情勢とも言えます。
2009年に出店した颯爽堂は、そうした情勢の中で生き残るための個性として、ブックス・ルーエに見られるようなアンテナ書店の戦略を用い、立ち位置を保っているように見えます。先程の写真で見られるように、地域を特集した雑誌を店の入り口横のテラスに積み上げ、傍らにある椅子で立ち読みならぬ座り読みができるようにしてあります。
颯爽堂は先程も述べた通り若い店ですが、出店戦略としてまずアンテナ書店の立ち位置を目指すというものがあったのではないかと推測します。確かに西荻北銀座という場所は坂本屋などの域外からの集客が見込める場所であり、また域外者が次に西荻窪のどこに行くべきなのか、路頭に迷う場所でもあります。
ただ、この座り読みコーナーに人が座って、利用しているという場面はあまり見たことが無いので、もしかしたらアンテナ書店をアンテナ書店という立ち位置たらしめるものは、実際に情報をそこで取得する顧客の存在ではなく、「情報を取得しようとする人に対して当店は開かれていますよ」というポーズまでで十分なのかもしれません。
もう少し研究が必要ですね。
(2016.2追記)
昨年中に店を閉めてしまっていたようです。ビストロ等話題の店がぎっしりと密集している西荻窪駅南口側に対して、散漫な印象で隠れ家的店が多い北口側には、颯爽堂のようなアンテナ書店が必要だと実感していたのですが。
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