The Old Arrow 西荻窪に出来た中世酒場風PUB

開店以来結構色々な所で話題になっていますね。こういうお店が欲しかったという人が、潜在的に多数居たということでしょうか。

The Old Arrow

中世酒場風PUB。中世酒場風に何を求める?

ヨーロッパ中世。この時代を想像してみなさいと言われたとき、皆さんは大体どのようなイメージを持つでしょうか。ある人にとってみて中世とは、騎士道とか封建制度などの(武士道にも似た)古風な価値観が支配する世界で、ある人にとってはギリシャ・ローマ以来の文化・制度を失ってしまった”暗黒の中世”。ある人にとっては近世以降の王や諸侯によるある程度合理的な領邦支配が始まる前の、フェーデとそれに対する神の平和の時代。
ヨーロッパ中世という時代をどう眺めるかは、その人がどういった著作や映像作品に触れてきたかによって異なるでしょう。でもなんとなくのイメージとして、現代よりも物質的に満たされず制限の多かった時代というところは共通してあるのではないでしょうか。したがって、中世酒場風のPUBが出来たので行ってみよう、となるとき、人はそこに中世縛りとでも言うべき制限つきルールと、その中での工夫・立ち回りを体験するつもりで足を運ぶのではないでしょうか。

8月頭にオープン The Old Arrow

ということで、西荻窪の一番街商店街に8月頭オープンした中世酒場風PUB、The Old Arrowの紹介です。このお店のTwitterプロフィールに書いてあることが正しいならば、日本で初のメディーヴァル・タヴァン(Medieval Tavern)となるようです。メディーヴァル・タヴァンというジャンルが飲食業の業態としてあることは知りませんでしたが、同キーワードで検索をしてみると、チェコのプラハ辺りにそういったお店が多く存在しているようです。確かに、チェコといえば最も輝かしかった時代は中世。当時からの石造りの建物を使って、日本でいうところ観光地の町家カフェのようなイメージでしょうか。
The Old Arrowについては、建物的にはもちろん中世ヨーロッパ由来のものではありませんが、ビルの地下1階にあるテナントのドアを開けるとそこは中世といったイメージです。

お店のオープン前に出ていた看板

お店のオープン前に出ていた看板

このドアの向こうが中世!

このドアの向こうが中世!

店に入って内装を見渡すと、木製のバーカウンターにテーブル、それと新装開店なのにくすんだ雰囲気のある壁面と手間がかかっている部分が目につきます。ただ空調設備であったりお手洗いであったり、石造りの西洋建築という設定であればあり得ないはずのガラス越しに見える開放的な中庭であったりと、ところどころ現実に引き戻される部分はあります。そこはそっと目を閉じて楽しむ必要がありそうです。
店内には中世ヨーロッパの楽器を使っていると思われるアンサンブル音楽の音源がBGMとして流されています。このお店のスタッフの方がそういった音楽を専門にやるミュージシャンの方であるらしく、中世趣味が高じてパブを開いてしまったということらしいですね。

軽い中世縛りの提供メニュー

気になる飲食メニューの中世縛りですが、こちらは中世縛りのメニューも取り揃えつつ、基本的にはもう少し広い時代のヨーロッパから、それっぽく見えるメニューをピックアップして提供しているといった感じです。ドリンクは蜂蜜酒のミードとか薬草酒とか、活字でしか見る機会の無いものを試すことができます。盃も擬中世風。少々安物感もある盃ですが、きっと使い古されてフチが欠けたりなんかすると、俄然雰囲気も増してくることでしょう。

エール(小)グラス。器はジョッキやポットもあります。

エール(小)グラス。器はジョッキやポットもあります。

写真を見て気付かれたかもしれませんが、店内の照明は全体的に薄暗く、テーブル上に蝋燭の灯りが置かれておりアクセントとなっています。暗黒の中世!
メニューにはそこに並んだドリンクやフードが、どうして軽い中世縛りをクリアしてこの店のメニューたりえているのかうんちくが書いてあります。これを読んでいるだけで面白いので、なかなか注文が出来ずかえって困ってしまいます。

スペルト小麦とライ麦のパン

スペルト小麦とライ麦のパン

古代から栽培されているスペルト小麦とライ麦を使った酸っぱいパンは、一緒に頼んでいたリーゲレのヴァイツェン(小麦ビール)ととても合います。こうして当時あり得たかもしれないマリアージュを試すことができるのは中世酒場風PUBならでは。

ニシンフィレの燻製

ニシンフィレの燻製

ニシンの燻製です。このニシンはハンザ同盟都市からやって来たのだろうかなどと設定を膨らませつつ、赤胡椒には目をつぶります。大分楽しみ方が分かってきました。それにしても、通常の居酒屋料理として出てきても遜色の無い美味しい味付け。お酒の選択肢が一癖あるものばかりという点を除けば、中世お構い無しに来ても楽しめるお店なのではないですかね。

中世酒場風PUBの需要をあらためて イロモノではない!

全体的な感想ですが、中世ヨーロッパと全く関係ない地である日本で中世縛りをなんとか実現しようとしている感があって、そこは非常に楽しめるお店でした。場合によっては本場のメディーヴァル・タヴァンよりも楽しいという可能性もあるのではないでしょうか(本場のお店のメニューにうんちくは載らないでしょう)。
また、飲み食いできる中世体験としてこういうお店は貴重であると、先程のマリアージュの部分についてもですが気付かされました。中世の体験機会といえば、昔であれば中世ヨーロッパをテーマとしたテーマパークなどに出向いて初めて体験できるものだったでしょう。ところが最近は中世の風景などビジュアル面については、映画やゲームなどを通じて容易に体験することが出来ます(大仰なテーマパークが廃れてきた理由の一つでもあるでしょう)。それに対して味覚というのは、そうしたVRでの体験では行き届かず、置いてけぼりにされているところです。ゆえに耳年増な現代人にとっても、こうしたお店に行くことで初めて発見できるであろうことが多く、それが冒頭に挙げた潜在的な需要に繋がっているのではないだろうかと思いました。

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