店決めの参考になるけれども、ときどきおやっと思うような過大評価があったりして、全幅の信頼を寄せることはできないグルメレビューサイト、食べログ。この食べログで吉祥寺のラーメン店の評価順検索をかけると、現在トップに出てくるのが南口パークロードにある”えん寺”です。
吉祥寺のトップ店なのに店名は高円寺?
つけ麺えん寺がオープンしたのが2010年で、当時はそれほど吉祥寺のラーメンシーンも盛り上がっていませんでした。そこからあれよあれよという間に高評価を勝ち取って、現在では吉祥寺のラーメン店特集などで筆頭に挙げられるほど人気のお店となっています。
そうして筆頭に挙げられることに異論は無いのですが、このお店の店名を聞いて浮かぶ地名のイメージは間違いなく吉祥寺でなく高円寺です。一体どういうことなのだろうと、オープン以来ずっと気になっていました。調べてみると、やはりこのお店が最初にオープンしたのが東高円寺で、そこから店名がつけられているようです。その後東高円寺店のオープンの1年くらい後に吉祥寺店がオープンして、吉祥寺が総本店という扱いになったとのこと。やはり高円寺の尖兵ということだったのですね(笑)。
ベジポタで有名な行列店
パークロードの雑居ビル1Fにあるえん寺は、店内席数が13席と多くないため外に行列がのびていることが多いです。雑居ビル1Fのエントランス部分壁際に椅子があるので、一応ある程度の人数までであれば座って待つことが出来ます。
これほどの人気店であるのにも理由があって、つけ麺のつけ汁の分類で”ベジポタ”と呼ばれる野菜中心のドロドロした汁(ベジタブル + ポタージュ)の代表店であるらしく、ヘルシー志向の女性の支持を受けているということなのだとか。私も当初そのベジポタというキーワードを聞いて誤解していたのですが、野菜以外の動物性原料も勿論使っており、決してベジタリアンとかヴィーガン向けのお店ではないようです。ただベジポタというワードの強さがあって、「野菜しか使っていないのにこの味が出せるのは凄い!」という感想を持ち帰る客も少なからずいそうですね。
つけ麺の麺も選択制でこだわり仕様
つけ麺の命とも言える麺も、4種類のものから選べます。蕎麦のような胚芽麺とうどんのようなモチモチ麺、それから国産小麦使用のバランス型太麺、そして平打ち麺。一応店の代表麺とされているのが胚芽麺ですので、こちらでつけ麺を頼んでみます。
胚芽麺らしく、麺の所々に黒い粒粒が見て取れます。写真で麺がゴワゴワとして好き勝手な方向に折れ曲がっていますが、それでいて表面がみずみずしく、啜ると舌にペタペタくっつきます。アルデンテと評してよいでしょう。そのまま食べても甘くて美味しい麺です。他の3種類の麺は試していませんが、この胚芽麺は一度は試してみることをお勧めいたします。
ペジポタスープと麺・具の組み合わせが独自性を
スープの方ですが、基本的には魚介豚骨系なので、これまでに食べたこともない新機軸という感じはありません。ベジポタというワードで売り込まなければ、魚介豚骨系の中の亜流としてひっそり話題になるだけであったと思います(笑)。
ただ、いたずらにパンチを目指さないでベジポタ部分で味にクッションをつくっているため、その部分が味の複雑さや不安定さを演出します。味や香りの主張が相対的に強めな胚芽麺や、つけ汁表面に浮かぶ水菜と合わさって、一本啜るごとに違った味を引き出せるのが特徴と言えましょう。たまに組み合わせにリンゴのような味を感じたりもして、人間の舌が起こす錯覚の面白さにも気付かされます。
吉祥寺で受け続けている理由は?
ベジポタスープと麺や具の組み合わせが作り出す不安定さは、新機軸ラーメンを求めてやってくる一見さんにもある程度の満足を与えるのではないでしょうか。一方、吉祥寺で受け続けているのは何故かというと、濃厚つけ麺の中のベジポタという選択肢で受けているというよりは、23区内レベルの魚介豚骨系つけ麺が食べられるお店、ということである意味”安牌”として受容されているのではないかと感じます。おそらくそういった意味で吉祥寺トップのラーメン店の名前が高円寺をもじったものというのも、象徴的なことなのではないかと。そして吉祥寺店が総本店なのは、吉祥寺でトップのお店という肩書きが各種展開において映えるからでしょうかね。
えん寺が吉祥寺のトップ店であることについて少し価値を損じるようなことも書いてしまいましたが、個人的にはリピートに値する凄く美味しいお店であると思っています。ただ魚介豚骨系つけ麺で(いや、他のジャンルのつけ麺やラーメン含めても)ライバルが登場してきてほしいなという気持ちが、少なからずあるのです。
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