2015年ももう終わり。井の頭公園では、年を跨いだ池のかいぼりが行われています。毎年正月に井之頭弁財天に詣でる参拝客は、池の水がすっかり干上がった弁天池を横目に眺めることになるでしょう。
弁天池護岸工事
少し前の記事で報告した弁天池の崩れ落ちた護岸部分ですが、重機と人力を使って補強工事が行われているようです。成長する樹木の根っこが護岸を突き破ってしまうという現象。このたび導入される護岸は果たして解決策となり得るのでしょうか。
弁天池の脇に資材置き場が作られており、謎の金属資材が置かれています。これを使ってどのように護岸を行うのか、想像ができますか。
格子状の金属資材を立体的に組み上げて使うようです。
この枠組みの中に、大量の丸石を詰め込んで護岸とするのですね。水圧を上手く逃がし、また樹木の根は丸石の隙間を這ってくれるだろうという目論見なのでしょう。なるほど。
弁天池に現れたイノカシラ・リバー
さて、弁天池に今訪れると、護岸工事の様子以外にも珍しいモノが見られます。それがこちらの、幻のイノカシラ・リバー。
かいぼりは機械を使って池の水を排出する一方、通常時ポンプによって組み上げられ続けている地下水を一旦停める形で行われます。ポンプが停まってすんなりと池が干涸びるかと思っていたら、予想以上に自然の湧き水があり、それが池底に新たな川の流れを作り出すほどになっていたのです。
武蔵野三大湧水池のひとつ井の頭池は、周辺住民が増加し地下水利用が多くなったため、池を満たすのに充分な水量を得られなくなりました。そこでポンプを使って深層地下水を汲み上げ続けているのですが、汲み上げをやめてもある程度の水量は地表に湧き出し続けており、巨大な川を作り出すほどなのです。名付けてイノカシラ・リバー。これは七井の池と呼ばれた井の頭池の、現在のありのままの姿なのです。
池ではなく川として姿を晒した井の頭池に、痛々しいと感じるか、それとも自然の力強さを感じるか。感じ方は人それぞれでしょう。もし井の頭池が川だったら弁財天のお堂は建てられたか。もし井の頭池が川だったら歌川広重は浮世絵に描いたか。そして現在の井の頭公園を、井下清が造ろうと考えたか。そんな想像も膨らんでいきます。
イノカシラ・リバーの登場は、かいぼり作業を行う方々にとっては予想外の障害でしょうが、井の頭池を愛する人々にとっては、いまだ自然の湧水池としてのポテンシャルがあるのだという朗報に聞こえた筈です。来年の春までに水が戻された後、平成29年度にもう一度弁天池を含めたかいぼりを行う予定ですが、その際にもまた力強い湧水を見ることが出来るのか。自然のバロメーターたりうる現象と言えるのではないでしょうかね。
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