古めかしい雰囲気のある映画館だとは思っていましたが、前身のムサシノ映画劇場含め63年の歴史があったとは驚きです。それにしても、ここ数年の街の動きは大きいですね。
吉祥寺バウスシアターといえば、最近では「爆音上映」が有名な、いつの時代も若者に人気の映画館という印象があります。サンロードの五日市街道側の入り口付近で、シアターのある場所だけ建物が奥に引っ込んでおり、建物前のバウスタウンと名付けられたその区画だけまるでアメリカ映画の街から出てきたかのようでした。
そのバウスシアターが、5月31日に閉館するとのニュースが入ってきました。正式発表は3月1日に行われる予定だそうですが、既にニュースサイトやツイッターなどでは閉館の知らせが駆け巡り、また公式ブログや公式ツイッターなどでも関係者が認めています。
バウスシアターの開館は1984年。前身も同じ株式会社武蔵野映画劇場の映画館「ムサシノ映画劇場」で、こちらは終戦後間もない1951年に開館しています。スクリーンは3つあり、有名作品の上映に加えてミニシアター系の作品の上映、ミュージックビデオの爆音上映、寄席、演劇、ライブと多種多様な催しを行ってきました。このシアターがニュースになることの頻度から考えるに、寂れてしまって採算が取れなくなってしまっての閉館ということでもないように思えるのですが、63年目の閉館の原因は何であったのか、とにかく公式な発表が待たれるところですね。
閉館に当たって、「THE LAST BAUS」と題されたイベントが4月26日〜6月10日のスケジュールで行われるようです。5月16日まではバウスシアターに縁のある映画の上映が、5月31日までは第7回爆音映画祭を行って、スクリーンの最後を飾るようです。また、6月1日〜6月10日はバウスシアターへの改装後営業の原点ともいえるライブイベントを行うようです。
63年という歴史が、ひたすらに重く感じられます。このニュースにショックを受けるという方も、世代を問わず多そうですね。
(2014.3追記)
投票の結果、上映作品が決定、発表されました。
4月26日〜5月16日『バウスをめぐる映画たち』
4月26日〜5月31日『第7回爆音映画祭』
また、6月1日〜6月10日までのライブの出演者も発表されています。
ラスト・バウス/ラスト・ライヴ
(2014.4.27追記)
いよいよ閉館まで残すところ1ヶ月ちょっととなってしまったバウスシアターですが、閉館、取り壊し後の展開について気になる新情報が出ていました。
吉祥寺に新映画館が誕生へ!バウスシアターのクロージング作品初日に発表 – シネマトゥデイ
吉祥寺発を売りにする映画、『さよならケーキとふしぎなランプ』の初日舞台挨拶中に、この映画のプロデューサーである松江勇武氏が、バウスシアターを継承するスクリーンを2年後を目処に作りたいと発言されたそうです。
もちろん具体的なプランの発表がされたわけではないので、この先話が立ち消えになってしまうことも考えられます。また、バウスシアターの名称が引き継ぎとなるかは未定。爆音上映も折り合いがつくかは未定、というなんとも心許ない(失礼)話です。
ただ、失われてしまう吉祥寺の一時代のカルチャーというものがきちんと評価され、次の時代に何らかの形で残していくという動きに繋がったということに、ある種の希望も見えるのではないかと思うのです。
一時代を築いたカルチャーが消失してしまうとき、そこに関わったことのある人だけが残念だと嘆き終わってしまうのではなく、メディアやソーシャルメディアなどを通じて、それがいかに残念なことであるかが拡散されていく。その結果カルチャーの保存に名乗りを上げる人も出てくるという構図が、これまで見られなかったものではないかと思うのです(もちろん、キッチンキャロット復活の件も念頭において)。
カルチャーを下支えするのは、そのカルチャーに新たに参加してくる人への、カルチャー自身の価値の正確な伝達プロセスであると考えられます。そしてカルチャーの消失とは、この伝達プロセスが閉塞してしまう現象です。
近頃はカルチャーが消滅するとのニュースが出ると、それが拡散する過程で、「そのカルチャーにいかに価値があったのか」「そのカルチャーの消失は何を意味するのか」という思いなどを伝えようとする動きもついてきます。これはつまりカルチャーの外にいる人に対して価値を伝達するというプロセスの復活であり、いわば消失のニュースがカンフル剤のようになって、カルチャーの脈を回復する、そういう現象が起きるのでしょう。
あまり期待を煽りすぎるとバウスシアターの閉館イベントが霞んでしまいますが(笑)、バウス復活に向けても、今後うまく事が運んでくれると良いと願っています。
コメント
[…] 吉祥寺サンロードで前身のムサシノ映画劇場の時代から63年もの間営業を続けたバウスシアター。今年の2月に、そのバウスシアターが閉館するというニュースを伝えなけれ…は、非常に残念な出来事でした。 […]