取り壊し始まったバウスシアター それでも各種作品の中ではそこに在り続け

取り壊し直前のバウスシアター サンロード
取り壊し直前のバウスシアター

吉祥寺サンロードで前身のムサシノ映画劇場の時代から63年もの間営業を続けたバウスシアター。今年の2月に、そのバウスシアターが閉館するというニュースを伝えなければならなかったことは、非常に残念な出来事でした。

取り壊し直前のバウスシアター

取り壊し直前のバウスシアター

その後、6月に入るとバウスシアターは完全に営業を停止してしまいます。バウスシアター自体の営業が停止しても、バウスタウンにあったテナントはしばらく営業を続けていましたが、猶予の時間が終わり、現在では全ての店舗が閉店、建物の取り壊しを行っています(ジーンズメイトさん、数年間にわたった閉店セール、お疲れさまでした)。

バウスシアター延命・再生の幾つかの試み

さて、吉祥寺の象徴として、そして爆音映画祭などの文化の発信地として愛されていたバウスシアターの閉館ということで、ニュースが報じられて以来なんとかその灯火を絶やさないようにしようというアクションが幾つかありました。バウスシアター閉館の理由の一つに、サンロードの地代の高さという今後の吉祥寺の街づくりに係る問題もあったということで、行政(武蔵野市)側からのはたらきかけを要望しようと、有志による署名集めなども行われました。Baus on Bausという名前のこの試みは、change.orgというインターネット上の署名サイトで5000人近い賛同者を集めていますが、バウスシアターの支配人であった方が借地権の売却をしてしまったため、従来どおりの場所でバウスシアターを存続するという可能性がほぼ消滅してしまい、宙ぶらりんになってしまっています。

バウスシアターに密接な関わりを持っていた表現者の方から、同じ吉祥寺内で場所を変えての復活をさせるつもりという発言もありました。吉祥寺を舞台に映画作品を撮り続けている、武蔵野映画社の代表の方の発言でしたが、バウスシアター閉館イベント上でのその発言以後の続報が聞こえてこないため、どのように進んでいるのかは不明です。

“サンロードのバウスシアター” 未練が作品に

アーケードに覆われた中心商店街の中に、爆音上映に代表されるとびっきり自由な映画館があるということが、吉祥寺という街の面白さを作り出していた。そう考える表現者の方も多いのでしょうか。バウスシアターの営業が停止してからも、まだそこに在り続けて営業していてほしいという思いが、いくつかの映像作品の中でバウスシアターを”延命”させているようです。

『グーグーだって猫である』の場合

10月から全4回、WOWWOWプレミアムで放映されたドラマ『グーグーだって猫である』の中では、主演の宮沢りえさんが何気なくバウスシアターの横を通りかかります。閉館後の施設としてはっきり分かるようには撮られていなかったように思います。撮影はおそらく、バウスシアターは閉館したもののバウスタウンは形を保っていた期間に行われたのでしょう。バウスシアター以外にも、吉祥寺の街の名物スポットが沢山登場する作品でしたが、放映時期を考えて、あえて生きても死んでもいない状態のバウスシアターの画を入れたのではないか、と思われます。
この『グーグーだって猫である』という作品は、2008年に一度映画として公開されており、映画版と同じ犬童一心監督によるセルフリメイク作品ということになります。映画版はバウスシアターで上映されたこともあり、閉館イベントでもリクエスト上映がされていました。

『SHIROBAKO』の場合

『SHIROBAKO』というのは、現在深夜時間帯で放映中のアニメーション作品です。この作品は武蔵野アニメーションという架空のアニメーション制作会社を舞台として、アニメーション業界の内実を描いた作品のようです。武蔵野アニメーションがあるのが武蔵境という設定で、実在の風景などがしばしば背景などに登場します(武蔵境周辺が、”聖地”ということになるのでしょう)。
この作品の第4話に登場するのが、いまだ映画館として営業中という設定のバウスシアターです。それどころか、”NEW バウスシアター”という名称になり、スクリーンも4つへと増えています。この作品の監督をされている水島努さんという方のtwitterで、そのような設定が明かされていました。現実のバウスシアター閉館騒動の際にも惜しむツイートをなされていたので、やはり未練と、「バウスはそこにあるべき」という思いがあって作品内に生きたバウスシアターを登場させたということなのでしょう。

※吉祥寺の街並が登場する第4話が収録されているのは、2巻(DVDBlu-ray)になるようです。

今後解体作業が進んでいくと、バウスシアターの建物は完全に姿を消して、サンロードに存在していた映画館のこともやがて忘れられていってしまうでしょう。そうした現実に対して、バウスシアターは依然存在し続けているという設定で作品の中に描き続けることは、なかなか洒落の効いた抵抗方法であるように感じます。流行ったりしないですかね?

(2015.1追記)
バウスのあった場所に新しくできる施設は、ボーリングやカラオケ等のアミューズメント施設ラウンドワンになる模様です。商店街の端っこまで若者を誘導という意味では、役割的に間違ってはいないのかもしれません。ただ、同様の施設が駅のすぐ近くにできてしまうと…ということで、この場所に今後も根付くのかどうかはやや不安に感じます。8月着工予定。

(2017.7追記)
バウスシアター跡地に出来る建物の名称、「吉祥寺スクエア」となるようです。9月末にオープン予定。地下3階、地上部3階で、ボーリングにカラオケ、ダーツ、ビリヤード、卓球、アミューズメントが楽しめるようです。サンロード出口五日市街道側にも大型商業施設が出店する傾向が出てきたのかな?

バウスシアター跡地の商業施設 吉祥寺スクエアが9月末オープン

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