西荻窪の日常的光景こそ非日常であるような気がします。
4月13日(日)に予定されている、吉祥寺駅の南北自由通路開通記念パレード。パレードの目玉として、パトレイバーの参加とともに挙げられているのが「象のはな子」の等身大曳きものです。象のはな子は井の頭自然文化園にいるアジアゾウで、今年で67歳になった、吉祥寺の象徴とも言える象です。
武蔵野美術大学の製作によるはな子の曳きものがどのようになるのか、これから当日にむけて明らかになっていくのが楽しみですが、「象」で「曳きもの」というと、武蔵野三大湧水池ウォッチャーとしては何か別のものを思い出さずにはいられません。というわけで、今回は西荻窪の象徴となっているまた別の象を紹介しましょう。
象が垂れ下がるアーケード
西荻窪南口を出ると、すぐに目に入る狭いアーケード街があります。仲通商店街と呼ばれる20店舗程からなる商店街は、いかにも中央線的なレトロ感あふれるアーケード。とは言え他の駅が再開発などの結果、少なくとも駅前だけは見映えの良い景色になったのに対して、駅徒歩0分から濃いレトロカルチャーを発散してくる西荻窪駅は、むしろ貴重な存在になったと言えます。
看板や屋根などの古めかしさとは異なり、アーケード内の店舗には新しいものや、チェーン店も数多く含まれます。中身としては普通のアーケード街ではないか、と油断していると、出口付近に吊るされているものに気付いて面食らいます。
ピンクの象のハリボテです。ええ、学園祭などで製作されそうな、ローテクノロジーを用いて作られたハリボテ。
まあ、百歩譲って象のオブジェは、アーケード街のにぎやかしだと考えることにしましょう。名鉄百貨店のナナちゃん人形のように、シンボルとして強烈なものがあると集客上の強みとなります。けれどもこの象、一年に一回下ろされ、曳きものとして地上を練り歩きます。9月15日頃に行われるこのお祭りの名称は「ピンクの象を引っ張るぞー」。このセンスに、なかなかついていけません。
ピンクの象はどこからきたか
ピンクの象が登場したのは、ゆるキャラブームなどが始まる遥か以前の昭和50年頃。当サイトで井草八幡宮と一緒に紹介した、荻窪八幡宮の子供用神輿として考案されたものであるようです(つまり、由緒正しい神道の曳きものとなるわけですか)。
作ってはみたものの、置き場所がなかったので、丁度完成していたアーケード街の天井にぶら下げ保管することにしたとか。ピンクの象の真下付近には、考案者となった西荻餃子さんの店舗があります。
何故象になったのか、さらに何故こともあろうにピンクになったのか。ピンクで象という組み合わせには歴史的・世界的にも色々と意味があります。宗教的に見れば、ヒンドゥー教の神、ガネーシャ。あるいはその影響を受けた仏教の歓喜天。特にガネーシャが描かれるとき、肌がピンク色に塗られることは多く、タイには有名な寝そべったピンク色のガネーシャ像があります。
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また、「ピンク色の象が見える(seeing pink elephants)」という表現が、アルコール摂取による酩酊状態をあらわす表現として世界的に使われます。映像作品としては、ディズニーの『ダンボ』において、酔っ払ったダンボが見る映像として登場しています。
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そういった意味合いをもつピンクの象から、色々と深読みも出来てしまうのですが、実際ピンク色になった理由は、たまたま赤と白のペンキが手元にあったからだそうです(そういえば、紅白のペンキは祭事で引っ張りだこです!)。荻窪八幡宮の曳きものとしてそのまま納入されていれば、後世の研究者達を大いに悩ませたであろうに、残念としか言いようがありません。
吉祥寺の象は何色になるだろう
さて、話を戻して吉祥寺の自由通路開通記念パレードです。はな子の像は段ボールで製作されるそうですが、これにはどのような色が塗られるのか、楽しみです。パレードのポスターなどを見ると、青色とピンク色の象が居るようにも見えるのですが。
さらに、パレード後の象の扱いも気になるところです。鳴り物入りで完成した自由通路の、天井からぶら下げるという妙案はどうでしょう。吉祥寺駅という名前を覚えてくれなくても、「象が垂れ下がる駅」として、訪問者には印象を残すことが出来るかもしれません。
パレードの当日練り歩く象を見て、西荻窪の象を知る人は総ツッコミだろう、そんな予想あって記事を書いてみました。
(2015.5追記)
象を世に送り出した西荻餃子さんですが、こちらのブログの情報によると、店舗が5月30日(土)をもって閉店になってしまうようです。
【5/30(土)閉店】「西荻餃子」 | 西荻OVERLOAD!
餃子の販売等の通常営業は5月16日(土)までとして、5月23日(土)〜30日(土)は、西荻餃子で使用していた餃子の皮の予約分引き渡しのみされるようです。
閉じられたシャッターの表側には、餃子の皮を注文する用紙の他に、お店に対してのメッセージを投函することのできる紙袋が取り付けられていました。
昨年のえびすやも然り。西荻窪のカラーを作った伝説的な店が一つ一つ消えていってしまっていますが、まさか2015年問題が西荻の商店街に顕著にあらわれるとは思いませんでした。
(2017.3追記)
ピンクのハリボテ。しわくちゃで手作り感溢れたピンクの象ですが、3月18日をもって15年間の役目を終え、3代目の新ピンクの象に交代をいたしました。3代目は先任ピンクの象とうってかわってすべすべつるつるの見た目です。キバが下にぶらりと垂れずに、前方に突き出しているのも先代になかったやる気をうかがわせますね(笑)。
3代目ピンクの象の見た目や交代経緯について賛否両論ありそうですが、少なくともこれから西荻窪のピンクの象のデザインというと、3代目のものが基準となっていくのだろうなと(先代は逆にあまりに衝撃的な見た目のせいで、グッズ等で姿をそのまま描かれることは少なかったですが)。
昨年吉祥寺のシンボルの象も不在となってしまいましたが、西荻窪を表すニュートラルなシンボルとしての象が、これからも使われ続けるかどうか、まったく未知数です。
コメント
[…] 毎年恒例、西荻窪の忙しいイベント連続期間を紹介します。タイトルはまあ、偉大なる象のイベントのリスペクトと考えて下さい。こうして西荻窪カルチャーに毒されていくのでしょう。 前々年、前年と取り上げてきました、5月終わりから6月頭にかけての西荻窪商店街の連続イベント。街歩きを促すという主旨も同じならば、凝りに凝った街歩きマップを発行するというのも同じ。ただし、今年は2つのイベントの間隔が、1週間から2週間へと変更されています。さすがに2週連続開催には、異論もあったの…かな。 […]
[…] 以前紹介の記事を書きました、西荻窪仲通商店街にぶら下がるピンクの象。この象が車に乗せられて、西荻窪の子供達中心で引っ張られます。 […]