一圓三鷹北口店 もやしてんこ

もやしてんこ グルメ
もやしてんこ

東西南北に広がる吉祥寺ブランド圏。一圓の出店箇所はこの範囲に対応していそうですね。

一圓 三鷹北口店

吉祥寺人に昔から親しまれているラーメン店と言えば、ホープ軒、さくらい、そしてこの一圓ではないでしょうか。何故これらの店が今もなお愛され続けるのかというと、昔から吉祥寺にあって同じ味、同じサービスを提供し続けてきたからとしか言いようがありません。

以前より書いていることではありますが、長らく吉祥寺は有名ラーメン店の新規出店の無い、ラーメン空白地帯でした。そこで吉祥寺人がラーメンを食べたいと思いついたときには、パッとしない新興店よりも安心して食べられるこれらの店に足を向けがちという事情がありました。
現在では、一風堂や麺屋武蔵の出店を皮切りとして徐々に人気ラーメン店が出店してくる情勢に変わっています。一圓などに通い詰めた生粋の吉祥寺人の高齢化という問題もありますので、これらの店にとって、随分遅くやってきた正念場をどう乗り切るのかが今後の課題となってくるのでしょう。

とは言え、一圓については時代ごとにプロデュース戦略を立てて、波を乗り切っているような気もしないことがありません。雑誌で吉祥寺特集などがあると取り上げられる、一圓のジャンボ餃子。こちらを推し始めたのも、吉祥寺に若者の街としてのイメージがつき始めてからです。中道通りの一圓本店で、点心の店頭売りをしているのも、通行人のニーズを汲み取った売り方のように思います。こういった印象に残るための戦略があると、時代の趨勢が変化してもなかなか忘れ去られないで、立ち位置を確保していられるはずです。

さて、一圓の印象に残る戦略として、もう一つのもの、「もやしてんこ」の噂を聞いたものですから、これまで行ったことの無い三鷹北口店まで足を運んでみました。

「もやしてんこ」を求めて夜の三鷹を往く

三鷹駅北口を出ると、真北に向かって広々とした通りが伸びます。最近スカイゲートタワーなどができて、小ざっぱりとしたイメージに変わってきた気がしますね。あわよくば、再開発に出遅れる吉祥寺を食ってしまおうという魂胆なのでしょう。

一圓三鷹北口店

一圓三鷹北口店

やがて大通りは、調布方面から伸びる三鷹通りと合流します。この通りを北に数百メートル、井の頭通りの手前まで進むと、一圓三鷹北口店の店構えが見つかります。余談になりますが、この三鷹通り沿いには一圓を含めて、広義の中華料理屋が沢山並んでいました。横河電機が近くにあるので、安く量も多い中華定食などに大きなニーズがあるのかもしれません。

席に着いて、注文を取りにきた若者に、恐る恐る「もやしてんこ」と告げます。働いているのも大学生と思われる威勢の良い若者ですので、店内に疲れた場末の中華屋のイメージは皆無です。

一圓のメニューを考察する

「もやしてんこ」が席に届く前に、他のメニューについても言及をしましょう。オーソドックスな「一圓らーめん」は500円〜。「一圓らーめん」のバリエーションとして醤油、塩、味噌の味があるというややこしい構成です。ほうれん草を麺に練り込んだ緑の見た目が異色の、「ほうれん草らーめん」600円。とんこつらーめんの「九州男児」600円など、共通メニューはそういったところです。

加えて、各店ごとに周辺の地名をメニュー名に織り込んだメニューがあります。たとえば三鷹北口店であれば、「三鷹らーめん」「西久保らーめん」「上連雀らーめん」など。上荻店であれば、「上荻らーめん」。上石神井店であれば「上石神井らーめん」など。地名メニュー戦略として、西久保や上連雀など本当にピンポイントな名称を付けているところが、地元人にとってニクい店になろうという戦略に思えます。先述の吉祥寺ブランド圏の中で、吉祥寺より細かい地域ブランディングを行っているところが重要なのかもしれません。こういった名称は少なくとも20年ほど前から使われていたようです。

「もやしてんこ」を平らげながら考察する

そんな特殊なメニューの中の「もやしてんこ」です。横河電機が近いという話をしましたが、成蹊大学の学生もこの店を利用することが多いようです。下宿学生のための安価なてんこもりメニューが、「もやしてんこ」なのでしょう。ジャズピアニストの上原ひろみさんも、学生時代によく食べに来ていたというエピソードがあるそうです。

もやしてんこ

もやしてんこ

麺の上に組み上げられたジェンガのようなもやしは、炒め方が絶妙で、しなしなになってしまっていません。絵面的に比べられるべきは、二郎系の大盛りラーメンでしょうが、二郎系と比べますとさすが中華料理店のもやし炒めということで、クオリティが桁違いです。

スープ、麺はいたって普通の、中華料理屋のラーメンという印象です。ここはとにかくもやし炒めの素晴らしさを語るべきなのでしょうが、食べ進めていくとあることに気がつきました。

ようやっと麺に到達しようという時点で、二郎系のラーメンよりも食べにくいと感じたのです。理由は明白で、もやし炒め自体のクオリティが高く、単体でもいただけるように味つけられているということでした。
二郎系ラーメンのもやしは、茹でたのみで味が行き渡っておらず、ひどく手の抜かれた印象のあるもやしです。しかしながら、それを食べきった後でも、油分や塩分などを気にせずスープをいただけるという具合になっています。いわば、前菜とメインの関係です。
ところが「もやしてんこ」の場合は、ラードの香りや塩味が単品料理と同じようにつけられているので、スープの直前で味の飽和状態に達してしまいます。おまけに炒め物部分からスープに落ちる油もあるので、なべて同じ味になってしまい、箸が止まってしまうのです。

以前、西荻窪のラーメン大の紹介で、二郎系ラーメンの人気の背景は食べきる作戦を立てる楽しさだと書きましたが、「もやしてんこ」については、なかなかに作戦の立てにくい大盛りだと言えましょう。

三大湧水池エリアは、比較的大人しめの学生の街ですが、それ故に上品なブランディング戦略と学生向け戦略を境目無く共存できるのかもしれません。「もやしてんこ」は、若者のようにがっついて食べるのではなく、もやしを褒めながら休み休み食べるべきかもしれませんね。

コメント

  1. […] 西荻窪の店舗の名前は、「泥棒市場」。場所は現在の一圓上荻店があるところです(リンク先記事は三鷹店についてですが)。 […]

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