珈琲 杖 久我山西荻窪間住宅街の読書捗る喫茶店

杖の暗闇の中でいただく珈琲 その他のエリア
杖の暗闇の中でいただく珈琲

照明暗めの落ち着いた店内には、この店の静けさを求めてはるばるやってきたお客さん達が古家具のように息をひそめ存在しています。

珈琲 杖

西荻を少しはみ出して見つけた西荻

西荻窪にあるお店、といったときには普通どの辺りのお店までが想定されるものでしょうか。
JR中央線の西荻窪駅を中心として、商店街伝いに北へ、南へ、北西へ、南東へとまっすぐ歩いていってお店が尽き果てる辺りまでが、誰もが同意する西荻窪のお店の範囲でしょうか。勿論商店街の通りを横道にちょっと入ったところにもお店が開いていますので、思い浮かべるべきは地図上に広がる大区画です。五日市街道や女子大通りなどそこを越えるといよいよ住宅しかなくなってしまうという車どおりの多い道を境界とした大区画にすっぽり入るお店が、すなわち西荻窪のお店となるのでしょう(ややこしい言い回しですが)。西荻窪ファンは基本的にこの区画からはみ出さないお店を回っていれば、そこで西荻窪的なものに数多く出会えるはずです。
ただ、人は未知なるものを探求する生き物。この大きな道を渡ってしまったらもう西荻窪ではない、ということを理性によって把握していても、なおその境界の外に西荻窪的なものが存在するのではないか…?と興味を持ち足を延ばしたくなるのです。
今回紹介する喫茶店、『珈琲 杖』は、そうした未知なるものへの探求心が実りたどり着くことの出来た、境界外にあって西荻っぽいお店です。五日市街道というルビコン川を渡り京王井の頭線の久我山駅に向かう途中の住宅街に、そのお店はあります。

懐かしい古家具に出会える喫茶店

おそらく、他の西荻窪紹介サイトなどの事前情報などがなければこのお店の前を通りかかっても店舗であると気付かなかったはずです。小さな立て看板がありその事実を主張してはいますが、民家の前によその店舗の看板が間違えて置き去られてしまった可能性の方を強く支持したであろうこと間違いありません。

『珈琲 杖』の店構え

『珈琲 杖』の店構え

玄関 そして開けるのを躊躇う扉

玄関 そして開けるのを躊躇う扉

果たしてこの扉を開けるのに、ノックのマナーは必要だろうか。万が一看板の存在がなにかの間違いで、この建物が見た目そのままの民家であった場合、不法侵入者として通報されても仕方がないのでは?そうした悩みを胸に抱える遊びを楽しみながら(なにしろ、事前情報で知っているのです!)靴を脱ぎそろえ下駄箱にしまい、勇気をもって店内に足を踏み入れます。扉を開けてすぐ出会うのはやはり民家のようなありきたりな廊下。でもその廊下の奥には注文を受け付けるカウンターがあり、客席が2階にあるのでカウンターで注文してから、このお宅の”お二階”への階段をすたすたと昇ります。
階段を昇るその途中から、そこかしこ配置された古家具に気を惹かれます。このお店の佇まいもレトロな民家でありながら、店内に飾られるものもちょっと懐かしいレトロ調の趣をもった古家具の数々。それでも郷土資料館のようなかび臭さを感じないのは、それらの家具がついこの間(と感じてしまうのは年寄的かもしれませんが)まで使われていたような馴染みのあるものだからです。この感覚、これは西荻窪に点在するアンティークショップを冷やかしている感じに近い。

暗がりと静けさに出会える喫茶店

2階のお部屋はごくごく庶民的な畳敷きで、味わい深いテーブルと椅子の組み合わせが数組、それぞれが適当な距離を取って置いてあります。気に入ったテーブルに腰掛け文庫本を拡げると他の客の存在は忘れて没頭が出来ます。やがて下階から店主が運んできてくれる自家焙煎豆の珈琲。それ以降は没交渉です。商店街の喧噪から離れ静けさを求めてやってきた客層ですから、この環境では本当に読書が捗りますね。

杖の暗がりの中でいただく珈琲

杖の暗がりの中でいただく珈琲

この珈琲杖、記事執筆時点ではコロナの影響で短縮営業となっていますが、平時であれば24時までと深夜営業に対応しています(お店のtwitterで営業時間等は確認してください)。日が落ちてしまうと店内もとっぷりと暗く最低限の灯りだけになりますが、その雰囲気が酔い覚ましには心地よく、西荻でお酒を飲んだ後にはちょっと体を動かすつもりで、今宵も西荻をはみ出してみようかな、となるのです。

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