三大湧水池の基本情報、最後は面積が一番小さい善福寺公園です。面積約79,000平方メートルと、井の頭公園の5分の1程度しかないこの公園は、開園も1961年6月と三大湧水池の中で最も遅く、知名度も一段劣ります。知名度が低い理由は、やはり公園の名前を冠した駅が無いということと、アクセスが不便な立地であるということが主要な原因と思われます。また近隣にある善福寺川緑地と似た名前で、桜の名所としてそちらが脚光を浴びることが多いのも、善福寺公園の名前を霞ませる一因になっているかもしれません。
しかしながら、曲がりなりにも三大湧水池のひとつであるこの公園は、人工の公園には無い武蔵野の湖沼の雰囲気と、悠久の時間の歴史を持っています。一応残っている縁起としては、奥州征伐に向かう途中の源頼朝が立ち寄り、水を求めて弓で土を掘ったところ井戸の出が遅かった、それゆえにこの地を遅の井(おそのい)と名付けたというものがあります。また池の名前はかつてこの付近にあった善福寺という寺からとったもので、その寺は江戸時代に廃寺となったものの付近の地名に名を残しているということのようです。
善福寺公園の池は、北にある上の池、南にある下の池と2箇所に別れており、池の間は結構離れています。善福寺川の水源となっているのは下の池、お堂があるのは上の池で、それぞれの印象は石神井公園の2つの池程ではないにせよ、結構異なります。しかし共通しているのは、東京から瞬時にどこかに飛ばされてしまったかのような喧噪と無縁の雰囲気です。駅が近くないので、公園利用者の導線が特に無く、人の動きに停滞が感じられるということも幸いしているのかもしれません。
最寄り駅は上石神井駅か西荻窪駅になる筈ですが、そのどちらの駅からも直通で延びる道がなく、着くまでに探検をしなければなりません。あるいは西荻窪駅から北上して善福寺川にぶつかったら、川を遡上して辿り着くというのが正しい行き方なのかもしれません。バスで行くのなら荻窪駅から乗るか、上石神井ー西荻窪間の路線を使うかのどちらかになります。車で行く場合は住宅街の中で有料駐車場を探すしかありません。一通もあるので、探検度はマックスに跳ね上がります。自転車で行く場合は、人気の無い公園なので一緒に移動しても差し支えないと思われます。
とにかく秘境感の強い公園なので、この公園に最も魅了されるのは、何かの拍子にうっかり行き当たってしまった人間であるように思います。かつて来園されたことがある人も、もう一度行ってみると価値の再発見が待っているかもしれません。