トトロの樹と呼ばれた樹は、ひとり坂の上に残されて何を思うのでしょうか。
坂の上のけやき公園
西荻窪駅を北に行く、と言うと、大抵の人が想像するルートは、西荻北銀座を通って青梅街道に抜けるルートだと思います。実際のところこのルートはやや東に向いているので、西荻窪駅から真北の方向というと、また異なったルートになります。細い路地をいくつも、三角形の二辺を通る非効率な手順で進むと、急に見晴らしの良い場所にさしかかります。そして、その丘の上には大きなけやきの樹が待ち構えているのです。
この樹はかつてトトロの樹と呼ばれていた、樹齢100年近いけやきの樹です。本来は畑に立っていた巨木でしたが、2008年に土地所有者の変更により、この場所が宅地に変えられるという計画が明らかになりました。
それに対して、以前からこの樹に親しんでいた住民の署名運動が起こり、計8000名を数える署名が集まります。杉並区はそうした住人の声を受けて、土地ごとこの樹を買い取り、公園へと整備しました。土地と樹の買い取り総額は、しめて4億円ほどだったと言われています。
この坂の上の公園には、トイレも遊具もありません。ただけやきの樹が一本生い茂っているだけです。けれども、この樹はそこで遊ぶ子供達の親の代、祖父母の代、さらにはもっと昔までを見てきて知っています。子供にとって、親よりも学校よりも偉い存在が世の中にあるということを知り、子供の特権で親しく触れ合う事ができるというのは、本当に重要な人生経験ではないかと思います。
だから、この公園はなんらオカルティックな理由付けも必要としない、子供達にとっての『パワースポット』であり続けるはずでしょう。
コメント
[…] その土地への住民の思い入れを表現した公園としては、以前紹介した西荻窪の坂の上のけやき公園という例があり、吉祥寺のこの公園のプランもうまく成功してくれることを期待します。ただ、名前に杜の字がついているこのネーミングは、ともすると吉祥寺の某所にある分譲住宅を連想させるような、安直なネーミングになっていやしないかと、少し残念に思うところではあります。 […]
[…] 何故これほど広い公園ができたか。その裏事情は、吉祥寺西公園もご多分に漏れず、周辺住民の意向によって跡地の利用方法が決まった土地なのです。このようなケースは、西荻窪の坂の上のけやき公園、五日市街道沿いの吉祥寺の杜宮本小路公園などでもありました。元々大蔵省所有の土地であったものを、武蔵野市が買い取り、ワークショップなど周辺住民の意見をヒアリングし用途が決定したという経緯です。公園のシンボルとも言える2本の巨木(シラカシ、コブシ)は元々の土地にあったもので、樹木を活かしたまま公園をつくるという手法は、先ほど例に挙げた2つの公園のケースでも共通していますね。 […]
[…] したがって、特にこの土地に保護したい樹木があったとか、子供の遊び場としての強い需要があってという形で整備が決まった公園ではないようです。公園のデザインを決める上では、宮本小路公園や吉祥寺西公園、それから杉並区の坂の上のけやき公園のように、地域住民によるワークショップが行われ、意見の集約がされたようです。 […]