中華そば みたか 昭和24年創業「江ぐち」を引き継いだ味

「中華そば みたか」の暖簾 グルメ
「中華そば みたか」の暖簾

“あの懐かしの味が復活!”というストーリーですが、”万人に懐かしい味”というわけではないですよ。

中華そば みたか

三鷹駅南口を出て、そのままペデストリアンデッキを直進すると、大きなビルに挟まれた通りが目につくでしょう。この通りに長い長いエスカレーターで下り、少し歩いていくと、三鷹に縁のある文人を顕彰したモニュメントのある三鷹中央通り商店街に繋がります。
ちょうど中央通り商店街に入る手前、左手にある商業ビルには地下へと続く狭い階段があり、行く先は地下飲食店街と大きく表示されています。その4店ほどの地下飲食店街(しかも1店は”ダーツ”です)に収まっているのが、今回紹介する「中華そば みたか」です。

自称すれば飲食店街です

自称すれば飲食店街です

「中華そば 江ぐち」として知られた店

このお店のオープンは2010年の5月、比較的新しいお店ということになります。ただ、このお店で出されている特徴的な中華そばを昔食べたことがあるという人は多いはずでしょう。というのは、昭和24年創業、三鷹の有名店であった「中華そば 江ぐち」というお店を、店主が亡くなったあとお弟子さんが復活させたものだからです。コンセプトは、昔からの味をそのまま同じ場所、同じ値段でということです。
「中華そば 江ぐち」の閉店が報じられた際には、大層な反響を呼び、連日お店に客があふれたそうです。また、わずか5ヶ月ほど後に「中華そば みたか」として復活した際にも、メディアも含め反響は大きかったとか。ただの地域有名店では、そこまでの話題になりません。

「中華そば 江ぐち」が脚光を浴びたわけ

一介の地域有名店であった江ぐちが脚光を浴びたわけは、このお店の常連であった作家によって、創作の題材となったからです。作品名は『近くへ行きたい。秘境としての近所 舞台は”江ぐち”というラーメン屋』。作者はドラマ化もされた『孤独のグルメ』の原作者、久住昌之氏です。

久住氏は三鷹市の出身で、漫画家やミュージシャンとして活動をされていましたが、1985年に小説として件の『近くへ行きたい。秘境としての近所 舞台は”江ぐち”というラーメン屋』を発表します。この小説の内容は、実在の「江ぐち」を題材として、従業員に仲間内で勝手に名前をつけ、それぞれの人物に勝手に背景をつけていくという実験的なものです。20代の作者によって書かれたこの作品は話題を呼び、やがて実在の「江ぐち」の従業員にも小説の存在が知られることとなる。そこで新たに作者と実在の従業員との間に不思議な交流が生まれることとなりますが、そういった辺りの話が後に改題・内容の増補がされた『小説中華そば「江ぐち」』、『孤独の中華そば「江ぐち」』という作品に収録されることになります。したがって最新作の『孤独の中華そば「江ぐち」』では、20代、40代、50代それぞれの年代の作者が同じ対象について語っているわけです。実験的作品として齢を重ねた作品と言って良いでしょう。

したがって、「江ぐち」閉店・「みたか」復活に駆けつけた客の中には、小説を経由して伝説的な店「江ぐち」を知ったという方も多いはずです。最早店自体の意思を離れて、地域の有名店には留まらなくなってしまったというわけですね。

実際の「中華そば みたか」の味は

「中華そば 江ぐち」時代の味を知らないので、現在の「中華そば みたか」の味がそのまま昔からの味であるという前提になりますが、これほどファンを抱えたお店の味には必然興味が湧きます。地下飲食店街の「中華そば みたか」へと足を運んでみました。

「中華そば みたか」の暖簾

「中華そば みたか」の暖簾

昼の営業時間の終わり頃にうかがったのですが、店外に3,4人ほどの行列が出来ていました。店の小ささと、回転速度によるところもあるかもしれませんが、流石は人気店といったところです。
基本メニューのラーメン(店名とは異なり、”中華そば”ではないのですね)は450円で頼めます。三鷹界隈においては大変良心的な価格です。

みたかのラーメン

みたかのラーメン

オーソドックスな中華そばのようですが、正方形で薄っぺらいチャーシューに、角ばった麺が特徴的です。スープをすすってみると、昆布と醤油の香りが膨らんで、全体的には濃口ながらぼやっとした味になっています。ただ、細かく刻まれたネギがこのスープには調和していると感じます。
麺はほとんど日本蕎麦のようで、柔らかめに茹でられています。ラーメンと蕎麦を一緒の鍋で茹でて提供している店で、間違ってラーメンスープに入ってしまった蕎麦の集大成のような感じです(笑)。
総合的な感想としては、やはり冒頭に書いた通り、万人に懐かしい中華そばという感じではありません。昭和24年の時点でも面白い味であったのではないかと思います。

「話し相手」になってくれそうな味

マイナスの評価を並べたようになってしまいましたが、話題店の欠点をあげつらって悦に入りたいというわけではありません。この味が三鷹で一番かと問われると、正直な感想としてそうは思わないということを述べたかったのです。
けれども、昭和24年からこの頭に疑問符が浮かぶような、ラーメンともつかないようなラーメンがこのお店で提供されていると考えると、きっと愛着がわくだろうと考えるのです。このお店の暖簾をくぐりラーメンを頼むと、何十年前の自分と同じ疑問符が頭に浮かぶはずです。人生のどんなシチュエーションでも変わらず同じ味であり続けるラーメンは、自分を見つめるタイミングでの「話し相手」にもなってくれるのではないでしょうか。そうした可能性を感じる一杯でした。

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